Present for You

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〜〜 epilogue1 〜〜

「…あ……」
「おっと…」

 パサッ――。
 小さな衣擦れの音と共に2人の密やかな声が漏れる。
 一つは戸惑い一つは感嘆の。

 アンジェリークの着た『衣装』は、なかなかに凝ったものだった。
 肩に、腰に、胸元にと、あちこちにリボンがあり、それを解くと
アンジェリークの白い素肌が少しずつ露になっていく。
 今も胸を覆ったレースが滑り落ち、まろやかな膨らみの殆どを露に
しながらも、その頂きは絶妙に布地に隠されている。
「惜しいな、もうちょいだったのに」
「もうっ、アリオ…っ!」
 アンジェリークの抗議の声が半ばで詰まる。
 もちろん、それはアリオスの所為だ。
「クッ…」
 胸の谷間に沿って唇を這わせつつ、アリオスが咽で笑った。
 やろうと思えばすぐにも脱がせられる作りになっている。
 だが、リボンを解くたびにその白い肌が少しずつ露になる仕掛けが
面白く、そうして羞恥に真っ赤になりつつ潤んだ瞳を向けるアン
ジェリークにぞくぞくして、結局は次のリボンへと指を絡ませる。

「…ック、これ、レイチェルと選んだだろう?」
 薄布一枚ごとに露になる様も、思わぬ所が剥がれ落ちてあわてる
アンジェリークの反応も、そうして、柔らかな肌と滑りのよい布地の
絶妙な手触りも。
 読まれていると分かっていても、まさしく自分好みだ。
 なるほど「アリオスも頑張って楽しんでね」と言うはずだ。

「…え、あ、うん…、そうだけど……」
「だろうな」
「あ、でも……」
 アンジェリークの答えが途切れがちなのは、アリオスの悪戯の
せいだ。
「でも………、黒がいいって言ったのは、…アルフォンシアだけど…」
「あ?」
 一瞬、アリオスの手が止まった。
「…アルフォンシアが?」
「あ…うん。レイチェルと選んでいたら、やってきて、絶対絶対
黒がいいっ! 黒しかないっ! って言い張って…」
「…………」
「レイチェルも、ま、順当だねって言うし…」
「…………」
「……あれ、でも、以前アルフォンシアは『白がいいっ』て言って
たのに、な…」
「以前?」
「あ…そ、その、あの…前に、アルカディアにアリオスに逢いに行った
時…」
「…………」

 それはアンジェリークを初めて抱いた時。
 小宇宙に変化したアルカディアを見つけ、どうしてもこの腕に
アンジェリークを抱きしめたくて。
 覚悟して来いとは言ったけど、また自分も決心した。
 そうしてアンジェリークは、あの約束の地にやって来た――――。

「えっと…アリオスに逢う為にお泊まりの用意をしてたら、アルフォン
シアがやって来て、絶対下着は真っ白がいいって言ったの」
「………………………………………………」
「なのに、どうして今度は黒だったのかしら?」
「………………………………………………」
 ――あのやろう……。
 レイチェルはともかく、アルフォンシアにまで読まれてのがしゃくに
触る。
「あの…アリオス?」
 アンジェリークが、アリオスの表情を読むかのように見上げて
顔を覗く。
「相談しちゃいけなかった?」
「いや…」
 アリオスは首を振り、改めてアンジェリークに手を回す。
「まったく、お前はいい親友と半身を持ってるよ」
「ほんと? えへっ、ありがとう」
 レイチェルとアルフォンシアを『誉められた』と、しっかり勘違い
したアンジェリークが顔を輝かせる。
 ――…だから、どうしてお前だけ、そこのところを読めねぇんだ?
 それ以外のところは、結構鋭いところもあるのに。
 ――けど…それがお前なんだよなぁ…。
 そうして、そんなアンジェリークが好きだから。
「アンジェ」
「なあに、アリオス?」
「愛してるぜ」
 突然のアリオスの科白に照れるより先に驚いて、大きな目を更に
大きく見開いて固まったアンジェリークに、アリオス咽を鳴らして
笑い、柔らかい躰を組み敷いた――――。









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