Loving You ...

5



「あっ!」
 直接肌を合わせた抱擁は、その感触に互いに驚く。
 アリオスは、少女の思った以上にまろやかな肌と柔らかな躰に。
 アンジェリークは、男の引き締まった固い筋肉の感触に。
「…いいな」
 ポツンと呟きを落としたアリオスは、そのまま、華奢な首筋に唇を落とした。
「あ……」
 首筋を味わうかのようにゆっくり辿るアリオスの唇。
 長い指は鎖骨の形を愉しんでいる。
 と。
 ふと、顔を上げた彼の気配に目を開ける。
「そういや、お前に似合う花をつけてやるって言ったよな」
「え?」
 フッと微笑ったアリオスは、鎖骨の下辺りに唇をつけた。
 ピリッとした小さな痛み。
「え? え? え?」
 何をされたかよく分からないアンジェリークが、首を傾げる。
「…よく似合う」
 出来栄えを確かめたアリオスが、目を細めて言った。
 それが何だか嬉しそうで。
「あ…ありがとう…」
 思わずお礼を言ってしまった。
「…クッ。お前、マジで面白い」
 肩を震わせ、
「気に入ったなら、もっとつけてやるよ」
 と、再び白い肌の上に唇を落とした。

「アリオスっ!」
 くんっと反る背。
 その白い肌に散る紅い痕。
「ああん…あっ、やっ! だめっぇ」
 喘ぎながら首を振る度に、栗色の髪がさらさらと音を立てた。
 胸の蕾を舐め、転がし、突き、甘噛みする。
 その度に、アンジェリークは甘い悲鳴を上げる。
「クッ…。ホント、敏感だな」
 固くなった蕾を銜えたままで囁くと、
「キャッ!」
 と、見事に震える肢体を胸で受け止め、既に尽きぬ泉へと差し入れた指を抜き差しさせた。
「あうっ! あ、アリオスっ!」
「ん? なんだ、アンジェ? ここがイイか?」
「ちっ、ちがっ! や! だめっ! ホントにダメぇ!!」
「ダメなんじゃねぇって言っただろ?」
 まぶたに軽く口付け目を見開かせる。
「アリオス…」
「…………」
 潤んだ青緑の瞳に、たどたどしく自分を呼ぶ声に、そのまま貫きたい欲望が込み上げ、息を詰める。
 余裕を装ってはいるが、堪えているのはアリオスの方。
 だが、今はそれを抑え、少女の躰を辿り降りた。
「あっ! ああっ!!」
 羞恥と狼狽に声を上げるアンジェリークに、もはや容赦なく、アリオスはぐいっと脚を開けさせるとその中心を目に映す。
「みっ、見ちゃだめっ!」
「無理言うなよ」
 それは出来ない相談だ。
「だって、やだっ! アリオスっ!! お願いっ!」
 涙まじりの懇願。
 それでも、これは聞けない。
 身を捩って、なんとか避けようとする少女の躰を片手で押さえ。
 せめてと閉じようとする脚を肩と手で遮る。
 そんな無理強いに、心の何処かで高揚する自らに苦笑しつつ。
「怖がらずに俺に任せろ。いいから、感じるままにイケよ」
 そう言うと、その艶やかな花に唇を寄せた。

 初々しく震える花弁を軽く銜えて、舌でなぶると 
「あああっ!」
 甘い悲鳴が簡単に上がった。
 増やした指に絡まる蜜が出し入れとともに湿った音を立てる。
「ふあ…あ、あ、あ…」
 意味のある言葉は出ずに、苦しげに喘ぐ声が耳に心地よく。
 手加減は心得ても本気でイかせるつもりで蠢かせる。
 指と。舌を。
 固く育った蕾を探り当てると、そっと突っつき撫で上げる。
「ああああっ」
 溢れ出る蜜を吸い取り、花弁で遊び、蕾を撫で愛で、その間も休むことなく二本の指を探るように抜きさせる。
「は…う……っく…」
 途切れ途切れに息を詰まらせ、予兆の震えが太ももを走った。
 ――そろそろいいか…。
 ぐっと指を屈して、奥を擦りあげる。
「ああっ! …アリオスっ!」
 アンジェリークが一際高く鳴く。
 息を詰まらせて、全身を震わせる。
 そうしてぐったりと力が抜け落ちた。
 
 ――…これならいいだろう……。
 震える花弁の溶け具合に、アリオスは満足して指を抜く。
 とろっと溢れた蜜をつっと吸い上げると、もう一度、可愛い蕾にキスをして、躰を起した。
 一度イかせたのは与える苦痛を解すため。
 もっとも、可愛く乱れる少女にそそられたのも大きな要因だが。
 ぐったりと投げ出された肢体を見下ろし、口元に笑みを深めると、枕元の小物入れに手を伸ばして、小さな袋をピッと破った。
「…ん……」
 彼の準備が出来た頃に、ようやくアンジェリークが意識を浮かび上がらせた。
 ゆっくりと、その小さな体を抱きしめる。
「…いいか、アンジェ?」
 今更ダメだと言われても止まることなど出来はしないが、それでも少女の同意が欲しかった。
「…ん」
 こくんと頷くアンジェリーク。
 自然に笑んで、汗ばむ前髪をかきあげ額にキスを贈る。
「俺に捕まれ」
 と、肩を差し出すと、ゆるっと回された細い腕。
「大丈夫だから、な? 力、抜いてろ」
「うん…」
 ただただ頷くアンジェリークがたまらなく愛しくて。
 想いのままに唇を包むと、そのままゆっくりと小さな躰に覆いかぶさった。
 
 最初は飛び上がるほど熱かった。
 その熱さに驚く前に、痺れるような強い圧迫感がもたらされる。
 それが怖くて身じろごうとしたが、アリオスの強い腕に阻まれてしまった。
「大丈夫だから力抜いてろ」
 励ますようなアリオスの声。そうして降りてくる優しいキス。
 それに陶然となったのもつかの間。
 激しい灼けるような痛みが躰の中心を襲った。
「! う…くぅ……」
 無意識に零れ出る涙。
「アンジェ、アンジェ…」
 何度も呼ばれる名前に、答えようとしても声さえ出ない。
「アンジェリーク…」
 それでも耳は、アリオスの優しい声を捕らえ、そうして、アンジェリークは悟った。
 
 ――私…アリオスが好きだわ……。
 焼けつく痛み。込み上げる圧迫感。
 躰は苦痛を訴えるのに、心がそれを悦んでいる。
 嬉しい…と。
 アリオスから、この痛みを与えられていることが…。
 今日会ったばかりの人だとか。
 自分はこの人に躰を売っているのだとか。
 そんなことがどうでもよくて。
 ただ、しがみついた広い背中が愛しくて、回された腕が嬉しくて。
 そうして、確かに自分の中にある彼に、心から喜んだ。
 
「大丈夫か?」
 アリオスの声は本当に心配そうだった。
「うん……大丈夫…」
 まだそこは、じんじんと痺れて熱く脈打っているけれど。
 お腹にある違和感が苦しいけれど。
 それが全部アリオスが居てくれる証だから。
 そっと降りてきた大きな手が汗を拭って、ほつれた髪を梳いてくれた。
そうして形のよい薄い唇は零れた涙を吸ってくれる。
 それだけで癒される。
「…少し、じっとしていような」
 目を合わせてそう囁いてくれる。
「うん…。アリオス、ありがとう」
 その零れた笑顔に。
 思わずアリオスは熱く込み上げた。
 
 繋がったままでじっとしていても、少女の中はよすぎる。
 柔らかく包み込まれ、呼吸とともに優しい波が寄せてくる。
 その上、こんな笑顔を見せられては…。

「お前なぁ…」
 苦笑混じりの声色で、アリオスはアンジェリークを覗き込む。
「煽ってどうするんだ? 困るのはお前だろ?」
「えっ? わ、私、何かいけないことした?」
「…ま、お前が悪いんじゃねぇけどな……」
 困ったように呟いて、華奢な躰を腕に抱き込む。
 今動くと、自分がどこまでも暴走しそうで、それはアンジェリークに余りに酷だと、ただ、ため息を吐く。
 
 どうやら自分は彼を困らせているらしい。
「アリオス…」
「なんだ?」
 と、くもぐった声が、彼が顔を埋めている首筋から聞こえた。
「あ…あのね。アリオスの好きにしていいよ?」
 顔を起した彼が真っ直ぐに見つめた。
「どういう意味だ?」
 思いがけず、彼の声色が厳しかったので、どぎまぎしながら、なんとか気持ちを言葉に出す。
「あのっ…なんだか、その、アリオス、困ってるみたいで。だから…その…私は大丈夫だから…」
「…クッ。悪い」
 途端に笑った彼が嬉しくて、ホッと息をつぐ。

「少し我慢してろ。すぐによくなる」
 アンジェリークの精一杯の申し出が嬉しくて。
 ここはありがたく受け取る。
 その代わりに。
「いや、よくしてやるよ…」
 快楽に染めて、痛みなど忘れさせてやる――――。

「ああっ! アリオスっ! アリッ!!」
 背をのけ反らせた息を詰まらせたアンジェリークの、晒された咽に吸い付く。
――さながら、獰猛な肉食獣が獲物に食らいつくかのように。
「イけよ。いっちまえ」
 軽く揺さぶりをかけて、イイ個所を擦りあげる。同時に手を伸ばしていた、繋がった場所にある蕾に更なる刺激を与える。
「はあっ! あ、あ、あっ…」
 不規則に収縮を繰り返していたそこが、きつく、アリオスを咬む。
「アンジェ…」
 アリオスに熱い吐息と共に名を呼ばれ、それが、か細くつなぎ止めていたアンジェリークの意識を吹き飛ばした。
 
 ――アリオス、大好き……。
 
 白い閃光が弾けて霞む意識の中で、ただそれだけを、胸に呟いた――――。
 



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