Loving You ...
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「降ろすぞ」 ふわっとベットの上に降ろされて、そのまま降りてくるアリオスの上体に合わせて背をつける。 背中に柔らかなシーツの感触がすると同時に、大きな躰に覆いかぶさられた。 こんな薄暗やみだからこそ、綺麗に輝く銀の髪。上着を脱いでいたため、羽織ったシャツの上からも分かる均整のとれた上体。 そうして微かに笑みを湛えて見つめる金と緑の瞳。 端正な顔とか、美男子だとか、そういうのだけじゃなくて。 その微笑みに見ほれてしまう。 と。 ふっと、明らかに口元にも笑みを浮かべると、 「緊張してるか?」 低く響く声で尋ねられた。 「う…うん…。やっぱり…」 隠したって仕方ないので、素直に頷く。 「まあ、そうだろな」 「あ、でも、嫌とかそういうんじゃないよ。なんていうか…」 それはアンジェリークにも不思議な感覚だった。 今日、会ったばかりなのに、そうしてここにこうしている理由も理由なのに、不思議に嫌悪はない――アリオスにも、そうして自分自身にも。 会ったばかりの人とこんな風になるなんて、よっぽど自分が嫌いになるだろうな…と思っていたのに、何故だがこの状況を赦している自分がいる。 否、なんだか自然だと、まるでこうなることが以前から決まっていたようだと思えてしまう。 「イヤじゃない。アリオスも私も…」 上手い言葉が見つからず、ただ、今の感じた事をそのまま伝える。 だけど、アリオスにはちゃんと通じたみたいで、ふっと優しく目を細めて 「サンキュ…」 と頬にキスをくれた。 たどたどしくあっても、ちゃんと答えるアンジェリークが愛しい。 「緊張するなとは言わねぇけど、俺も楽しませてもらうから、お前も楽しんでくれればいいな」 「あ…うん、頑張る」 素直に頷くのはいいが、頑張るというセリフが面白くて、ククッと咽を鳴らしてしまう。 「お前、面白い」 え? と問われる前に、顎を捕らえて上げさせると、アンジェリークは素直に目を伏せた。 ――キスっていっぱい種類があったんだ…。 触れるだけのキス。 ふわふわ甘いキス。 激しいキス。 そうして熱いキス――。 今、アリオスに貰っているのは熱いキス。 唇全体を包み込まれ、温かに湿った舌で愛撫され、そうしてするっと滑るように訪ってきた。 「んんっ…」 「息止めずに、ここでしろ」 と、ぺろっと鼻先を舐められて、そのまま再び口付けられて。今度は迷うことなく入ってくると、優しく口腔内を撫でられる。 ただ立ち尽くす舌をおし包むように絡めると、時にはくすぐるように、時にはあやすように撫で愛される。 「ふ…んん……」 大きな手に包み込まれた頬と、支えるように手を回された頭と。 アリオスに触れられる自分の体が奇妙に意識されて。 「よけりゃ、お前も応えてくれよ」 息継ぎついでにそう唇に囁かれ、降りてくるアリオスの唇が嬉しいと思った。 ぎこちなく、それこそ拙い以前のものだけど、それでも僅かに自ら応えようとしているアンジェリーク。 可愛い。 『初めて』に拘るタイプでは無いが、アンジェリークの初々しさが心地よい。 キスに本気で楽しさを覚える自分に内心苦笑しながらも、それもまた悪くないと思いつつ、密かにブラウスの襟元に手をかけた。 案の定、キスに夢中になっている少女からは制止の身じろぎさえない。 「はふ…」 唇を放すと、まだ息継ぎに慣れない為に、大きく深呼吸するアンジェリークの、火照った耳朶や顎の下、そうしてはだけさせた襟元からのぞく首筋へと、唇を辿らす。 「あっ!」 今さらながら服の乱れに気がついたアンジェリークが、戸惑ったような声をあげる。それが可笑しくて可愛くて、肌に唇をつけたままでククッと笑った。 震えるアリオスの肩に、アンジェリークが困ったような含羞んだ照れたまなざしを向ける。 「気がつかなかったんだろ?」 耳元で言ってやると、その声にくすぐったそうに身をすくめ、それに合わせて耳朶を飾る花が揺れた。 そっとその花に指を添わす。 「これ、外していいか?」 彼女の小さな耳たぶに似合うイヤリングだけど、アンジェリークの素のまま全部を味わうためには少々邪魔で。 「あ…うん」 頷いて、耳元に手をあげかけたアンジェリークを制す。 「俺がやる」 彼女を覆う全てを自分の手で除けたかったから。 器用にもキスしながら片手でイヤリングを外すと、ベットサイドに置いて、 「お前には、俺がもっと似合う花をつけてやるよ」 そう言って、またもや唇を奪った。 今度は躊躇なく次々にボタンを外しつつ、背中に回した手でホックも外されてしまう。 いきなりルーズになった胸に、アンジェリークは身を堅くして身じろいだが、その動きを逆手にとって半身を起させられた。 「んっ…!」 キスを受けたままなので、声も出せず、いままでのゆったりした手順のつけを払う早業に、ただぼう然としてしてしまう。 そのままアリオスの大きな手が、乱された襟元から忍び込む。 「んん〜〜っ!」 流石に焦って身動きしても、彼の片手でなんなく封じられて、あっと言う間にスリップ越しに胸の膨らみが包まれる。 「!」 思わず身をすくませたアンジェリークに、アリオスはようやく唇を離すと、 「そんなに固まるなよ」 と可笑しそうに呟いた。 「だ…だって……」 やめて、とは言えない代わりに俯いたアンジェリークの耳に 「…柔らかいな」 と、まるで独り言のようなアリオスの声が響いた。 まるで魔力のようだ。 ぽつんと漏らされた彼の声。 それが、初めて触れられる緊張や羞恥を押しやってしまう。 そっとアリオスを伺うと、 「結構触り心地いいぞ」 「……えっち」 「クッ…当たり前だろ?」 可笑しそうに目も口元もほころばせる彼の笑顔。 それが一番魔力を持っている。 「…………」 身の置き所がなくて、ただ、アリオスの広い胸に顔を埋めた。 クルッと躰を返され、背中越しに抱き寄せられる。 回された手は片方は胸を包みつつ、もう片方は残されたボタンを外し、腰のファスナーを降ろす。 そんな風に服を緩めているくせに、アリオスの手は時に抱きしめ、 また時に撫で、アンジェリークの躰を解していく。 「あ…ん……」 身動きするたびに、自然とずり落ちたスカートが、パサッと音をたてた。 「は…ふ……」 思わず漏れたため息。 「いいから、寄っ掛かかっちまえ」 耳に低く囁かれる。 言われなくても、もう、躰を自分では支えられない。 ただ、背中のアリオスの体温が、とても温かかった――。 包み込んだ乳房は、少女の華奢な外見に反して、意外に張りのある確かな手ごたえを与えた。 布越しに触れても、柔らかく掌に落ちる。ゆっくりと、持ち上げるよう包むと、それだけで少女はため息を落とした。 ――…敏感じゃねぇか。 未だ、快感としては受け取れてないが、確実に『何か』を感じた様子に、アリオスは薄い笑みを口元に掃く。 すうっと、指で頂きを下から上へと動かすと、ピクッと小さな肩が震えた。 ――上等だぜ。 首を伸ばして唇を塞ぐと、少女は素直に受け入れた。 「ん…ふ……」 まだ慣れない舌を絡め取り、時々息継ぎさせながらも、容赦なく口腔を愛撫する。布越しの胸への愛撫と深いキスに、アンジェリークの身体から余計な力が抜け落ちる。 ――そろそろいいか…。 するりとスリップの裾から片手を差し入れ、直に胸の膨らみを包み込む。 「あっ…」 流石に躰に力が入るが、それを宥めるように抱きしめる。 ――!… 一瞬、眉をたわめて、耐えるような表情を見せたアンジェリークに、背筋がぞくりと来た。 「…可愛いぜ、アンジェ」 薄く見開いた青緑の瞳に頷いてやると、少女は再び目を閉じた。 頂きの蕾を撫でたり軽く摘んだり、まだ僅かに芯が残る乳房を包み込んでもみ上げていく。 「ふ…んん……」 吐息が甘く染まっていく。 ――これは我慢できっかな? 戸惑いつつも素直に身を任せるのも可愛く、少しずつ乱れていく様はぞくぞくとする。 もちろん『初めて』のアンジェリークに無理させる気はないが、それもどこまで持つか、自分の忍耐を試される気分だ。 手は休ませずに、薄く染まりつつある耳朶を口に含む。その縁に沿って舌を這わせると、 「あっ! やっ、だ、ダメっ」 身をくねらせて肩をすくめた。 「ダメなんじゃねぇと思うけどな」 クツクツクツ。 背中越の彼の笑い。 その震えを耳の直ぐ後ろに感じて、躰の奥が軋んだ。 「アリオス…」 振り返って彼を見つめる。 アリオスは目を細めて笑っている。 「心配すんな。大丈夫だ」 そう言うと、ついっと頬にキスをくれた。 「俺に任せていればいい」 それだけで、自分に何が起こっているの分からず不安な気持ちが、消えてなくなる。 「うん…」 「イイ子だ」 もう一度、今度は額にキスをくれると、アリオスはブラウスを袖から抜き、スリップをたくし上げて 「ほら、アンジェ。万歳だ」 と、促した。 さっきから、着乱れた服や肩ひもに拘束されてろくに身動きも出来ないのが気になったから、アンジェリークは素直に腕をあげた。 躰が軽くなる解放感に、ふうっと一つ息をつき、そうしてやっと気がついた。――自分を包むものはあと一つだということに。 「やだっ!」 慌てて胸を抱え、膝を抱えて小さくなる。 「クッ…」 アリオスの楽しそうに鳴る咽。 本当に、ずっとアリオスは楽しそうだ。 「アリオス…楽しそうね」 「あ? ああ、楽しいぜ」 抱き込まれたまま、すうっと彼の手が伸びる先。 最後の一枚を彼は指にひっかける。 「あ……」 分かってたことだし、覚悟してたことだけど、やっぱり恥ずかしい。 思わず、ぎゅうっと全身を強ばらせると、そっと肩にアリオスの唇が降りてきた。 するするっと、少女を包んだ最後の一枚を取り上げる。 その小さな布が湿っていることを確認して、締まった足首から抜き取ると、そのまま床に落とす。 「う…あんまり…見ないで…欲しい」 小さく小さく縮こまってしまったアンジェリーク。 「お前、結構無理言うヤツだな」 そう言いながらも、今は一応腕を緩めてやると、ごそごそっと少女はそのままシーツの中に潜り込んでしまった。 その姿が、ウサギが雪の中に潜り込んでしまうかのようで。 必死で笑いをかみ殺した。 「寒いのか?」 手早く服を脱ぎながら、こんもり盛り上がったシーツに声をかける。 答えはどちらでも構わなかった。 『否』ならそれを根拠にシーツを剥ぎ取り、その裸体を目で愉しむし、―― 「う…うん、ちょっと…」 「そうか。なら、暖めてやるよ」 その柔らかさを躰全体で愉しむだけだ。 |
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背景素材:Silverry moon light 様 |