「アーサー、大丈夫なのか?」
ふと気が付くと、濃い緑の影と眩しい青空を背にセティがいた。
一瞬、状況が飲み込めず辺りを見回す。湿気を含んだ重い空気と
むせるような草の香り。
――ここは…ペルルークだ。
「あっ、いや、大丈夫だ。ちょっとぼんやりしていただけだ」
と言いながら立ち上がる。頭痛も息苦しさも、もうない。
「プリーストに回復をしてもらった方がいいぞ」
「あ、ああ…そうするよ」
アーサーが頷くと、セティがようやく安心したような顔をした。
先に進軍したセリス達を追おうと、歩きだしたセティの背中に
「おい、セティ。お前、杖無しでもライブが唱えられるように
なったんだな」
と声をかけた。
セティは振り返ると、少し首を傾げ、そうして笑って
「ああ」
と言うと、再び背を向け去っていった。
自分が思いだしたぐらい。
だから、セティだって覚えているのだろう…。
<Fin>
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