Take a 『お仕置き』 lesson

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「…………………………………………」

 今、アリオスは困惑していた。
 混乱といってもいい。
 ――一体、どうしろってんだ?
 
 アンジェリークは、恐る恐るではあったが、素直にやってきて傍
らに立った。
 そうしてゆっくりとベットに乗って、アリオスの膝の上に俯せに
なった。
 ――おっ、珍しく積極的じゃねぇか。
 と、心踊らせたのも束の間。
 様子が妙なことに気付いた。
 
 ぎゅうっとシーツを掴む手。細かく震える肩。
「私、大丈夫だから、ちゃんとお仕置きして?」
 と言ったその声も、ぎゅうっと目をつむり唇を噛む様子も、いつ
もの夜の艶やかさは微塵もない。
 
 ――おい、ちょっと待て。
 つまり。
 ――アンジェの言う『お仕置き』とは、子供が悪戯をした時に尻
を打たれる、アレ、のことなのか!?
 
「…………………………………………」
 
 一体、何が悲しくて、アンジェリークの尻を打たなければならな
いのか?
 そんなことすれば、アンジェリークが痛いし、痕だってつく。
 ――どうせ痕をつけるなら、他の方法でつけたいぞ…。
 などなどなど。
 
 ――…まあ、それが、お前なんだよなぁ……。
 深い深い溜め息。
 肌を合したのも昨日、今日ではないのだ。
 今まで出来るかぎり優しく抱いてきたつもりだが、つい羽目を外
して(タガが外れて)しまったことは…何度もある。
 なのに男が女にするお仕置きを、どうしてそう取ってしまうのだ
ろうか。
 ――俺の教育不足か?
 と、一瞬は落ち込むアリオスだった。
 
 だが。
 
 ここでめげていたら、アンジェリークの恋人はやれない。
 否。
 この天然ボケを逆手に取るのが、アリオスである。
 ――分かってねぇなら分かるように学習してもらわねぇと、
なぁ。
 などと思い始めた頃には、その金と緑の瞳は悪い企みを湛えてい
た。
「なぁ、アンジェ。お前、俺のお仕置きを受けるんだよな?」
「えっ、…う、うん」
「じゃあ、俺のお仕置きを学習してもらうぜ?」
「……………」
 この辺りで、アンジェリークもアリオスの瞳が妖しい色合いに染
まっていることに気がついた。
「ア、アリオス?」
 身の危険を感じて身体を起そうとしたアンジェリークの腕を、ア
リオスは捕らえて顔を覗き込む。
「お前、好きだろ? 学習が」
 そう。アルカディアに居た頃も、女王としての学習を熱心にして
いた。
 だから。
「俺の女として、俺のお仕置きの学習をたっぷりしてもらうぜ、
アンジェ?」

 夜は始まったばかりである。
 朝までには『基本的カリキュラム』はこなせるだろう。
 こうしてアンジェリークの『学習』が始まった――――。
 

<Fin>






何故にアンジェ(コレット)にアリオスなのかが自分自身で分かったような
気がしたお話です。
ここまでボケボケ少女だったら、恋愛以前に「よいお友達でいてくださいね」
で終わっちゃいそうです(笑)
自分で踏んだ40000ヒットに気を良くして自分で自分にリクエスト(笑)
最近、裏ものが多いのは……気のせいです(爆)
これが裏か? という突込みもありますが…)
あ〜、お仕置きの内容は、気が向いたら書きます。。。

久路 知紅




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