目覚めたときに…

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「え…風邪?」
「ああ…」

 朝の執務室。アリオスはレイチェルにアンジェリークの欠勤を告
げる。
「ちょっと重症かな。今は枕もあがらねぇ」
 半分は本当なので実感がこもる。
「三日は休ませるぞ」
 普段抑えている分、一度タガが外れると歯止めが効かない。この
三日はアリオスにとっての『生理休暇』だ。
 
「ふうん…」
 レイチェルは大きな瞳をアリオスに向ける。
「…なんだかアリオスもだるそうね」
「あ? そうか?」
 口ではそう言うものの、確かに少し気怠い。――つまりアンジェ
リークは推して知るべし。足腰立たないどころか、指一本動かせな
いままベットに昏倒している。
 ――ま、俺も昼まで寝ておくか。
 昼にはアンジェリークも起きるだろうから、シャワーを浴びつつ
ヤって、いや、その前に軽く一発ヤっておくか?――などと今後の
予定を立ててみる。
 
「あのさ、ここも色々手狭になってきたから、模様替えしようって
ことになったんだけど…」
 レイチェルが菫の瞳をちらと見上げる。
「ちょっとばっかし、手伝って貰えないかな〜」
「あ? そりゃ構わねぇが…で、どれをどこに持っていくんだ?」
 多少後ろめたさもあって、頷く。力を使えば大したことはない。
「えーっと、力じゃなくって、手を使って欲しいんだけど」
「あ? なんでだ?」
 振り返ると、レイチェルが肩をすくめた。
「あのさぁ、アリオス。ワタシはアンジェの友達で補佐官なのよ
ね」
「んこと分かってるぞ」
「だから、すこ〜っし、アナタの体力削っておきたいのよね」
「………………………………」
 
「ま、あのコの風邪は仕方ないけど…ね?」
 見上げてくる瞳と浮ぶ笑みに、思いっ切り苦虫をかみしめる。
 レイチェルの見事すぎる駆け引きに
 ――もしもこいつが参謀にでもいれば、あのクーデターも成功し
ちまったんじゃねぇか?
 などと思いつつ。
「仕方ねぇな。けど、昼までだぜ」
 と苦笑いしつつも、アリオスは袖のボタンを外して、腕まくりを
した。

<FIn>






テストとかの夢、見ませんか? めっちゃ難しくって滝汗流して、時間だけどんどん過ぎていく…。
起きてから「なんで今ごろこんな夢見るんやーーー!」とか思うんですが(笑)
あれって、脳の一種のオアソビだそうです。昔は色々ありましたねって。(遊ぶな!)
きっと、アンジェも今ごろだからこそ、こういう夢を見ちゃうんだろうな、と。
そんな気がして書いちゃいました。
(単に裏が書きたくなっただけ、という話しも(笑))

しかし、「本当に普段は抑えてるの?」って突っ込みには「ちゃんと眠らせてやってる」と答えそうです(苦笑)

久路 知紅



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