彼女の部屋に泊まった夜
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「ほら、肩出すなよ」 アリオスが上掛けを引き上げてくれる。 「ん…大丈夫よ」 もぞもぞっと潜り込んで、ふと目を上げると、すぐ側にあるアリ オスの顔。もちろん、もう何度も、こういう至近距離で彼の顔を見 たことがあるのだが、 「なんか変な感じ…」 「変?」 「うん…ええっと」 この違和感はなんだろう…、と。 「あ! そうか。服を着たままでアリオスと一緒に寝るのって初め てなんだ〜〜」 と、口に出してしまってから、とんでもないことを口走ってし まったことに気が付き固まる。 アリオスも流石に絶句して、ただ見つめてるだけ。 「な、無し! 今の、無しっ」 「クックックッ…」 アリオスが肩を震わせ笑いを堪えている。 「だ、だから、今のは聞かなかったことにしてっ」 「ハハハッ」 アリオスが吹きだし、そのまま腕を体に回してくる。アンジェ リークは薄い夜着越しに、彼の逞しい腕を感じ、胸がドキンッと 高鳴る。 「もう…アリオスぅ〜〜」 「いやいや、俺の努力が実ってるようで嬉しいぜ」 「努力って…!」 くつくつ、と可笑しそうに笑うから、その振動が薄い布越しに伝 わるから。 「もう、アリオスったら……」 コツンと、アリオスの胸に額を当てた。 たわいのない話しを暫く交わしていたが、やがて、アンジェリー クの声に、とろんと眠りが混じりだした。 「もう寝ろ」 小さな頭を抱えるように腕を回すと 「…うん……」 と、素直にアンジェリークはアリオスの胸に頭をもたせかける。 「おやすみなさい…アリオス」 小さな声が聞こえ、腕にアンジェリークの頭の重みが増した。 その、いつもより少し幼く見える寝顔をアリオスは見つめ続けて いたが、やがて、もう一度アンジェリークの肩に上掛けを掛け直 し、その柔らかな肢を緩やかに抱き寄せ、アリオスも目を閉じ た――。 <FIn> |
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