後書き





私はアリオスを幸せに出来たかな…?

「Fin」を打ったとき、一番最初に思ったことです。
この創作を書こうと思った動機が、『なんとしてもアリオスを幸せにしたい』、
その思いからだったので。
天空の鎮魂歌での「傷ついた貴方の魂を救いたかった」という、アンジェリーク
の気持ちが分かったような気がしました。

私はアリオスは、とても律義で、情熱的な男性と思います。

天空の鎮魂歌で、アンジェリークと決別を決めた後、それでも「…仲間の元に
送り届けるまでが、俺の仕事だかな」という台詞が酷く印象的でした。
(この後、パーティに合流したやりとりの台詞の影に、アリオスが去っていく
姿が描かれているのを今回見つけました。う〜〜ん…、と胸に迫ってしまいま
した)

この創作を書くに当たって、もう一度天空の鎮魂歌をプレイしたのですが、以前
には分からなかったアリオスの想いがひしひしと伝わってきました。

アリオスは、アンジェリークと出会ったときに、既に大きな仕事(クーデター)
を終えた後です。十年をかけて計画・実行をした皇位簒奪。それは例え失敗に
終わってもアリオスの歴史です。
『皇帝』。ただ一つの生きる目的。
そのはずだったのですが、アンジェリークと出会い、旅をするうちに、自分の
本当に望むものが皇位ではないことに気付いてしまった。島流しイベントでの
「自分の生き方が馬鹿馬鹿しく思えちまう」と言う台詞は重いです。
アンジェリークのことにしても、エリスの器としてではなく、アンジェリーク
自身を愛している自分を自覚していた訳で、自分の信念とアンジェリークへの
想いに苦しみ悩み、引き裂かれながら、最後に信念に殉じた――というのが天
空のアリオスエンディングだったと思います。(やっぱり律義だ)


トロワでの彼は、過去の全てを乗り越えて、真実を手に入れる過程が描かれて
いる気がしました。

トロワでのアリオスはいわば隠しキャラで、一切ストーリーに絡んでいません。
まさにアンジェリークと恋をするために居る存在、と言う感じなのですが…。

私はアリオスに「どうせ転生して来たのなら、今まで経験したことがないこと
をやらせてみよう」と思い、子守から売り子、草刈り、皿洗いまでやらせてみ
ました(笑) また、全くストーリーには絡まないけど、私なりにアリオスにス
トーリーを絡めたいと考えつつ、書いていきました。

書き進めるうちに、何故か私はアリオスとエルダが重なって見えました。記憶
を失い、アンジェリークに力をもらって、強くなって、そうしてアンジェリー
クを守る存在となっていく――。そんな気がします。

天空の後に、どうしても書けなかった二人の物語。
でも、トロワまで『私の物語』を作るのを待っていてよかったな、と思ってい
ます。
絶大な力を持ちながらも、ただのアリオスとしてアンジェリークを守る存在と
なる、天空での海のイベントで彼が言った「ちゃんと見ててやる」、そういう
存在となる、これが私のアリオス観なのだと思います。
ですから、今後もアリオスは『宇宙を司る力』は持たないと思います。時空を
越えた旅人として、アンジェリークの恋人として、一緒に生きていく、そうい
う新しい人生を築いていくんだと思っています。

ところで、アリオスの力について。
プレイしていて、ラブラブ会話にぼーっとしていて(笑)、気がつくのが遅かっ
たんですが…、
「あれ? アリオス、あの魔導の力をどうしたの?」
結局、ゲーム中では一度も触れられなかった彼のあの力。果たしてどうし
ちゃったんだろう?
でも、もしも彼にあの魔導の力があれば、今度は本当にアンジェリークの為に
使うはずです。それをしなかった、出来なかった理由をこんな風に解釈してみ
ました。でも、かつては力を求め、頼り、目的のために生命さえ左右していた
彼が、一度、何の力もない存在として在る、それもいいかな、とか思ったりし
ています。彼の本当に魅力は、魔導の力では無い、と思ったから。


最後のシーン、これは最初から頭にありました。このシーンを書くために、ラ
ストにアリオスにあの台詞を言わすために、これを書き綴りました。

このお話、当然ですが、最終的には二人が結ばれるところまで描くつもりでし
た。というより、最初に、あの止め絵の後を書こうとしました。(お約束〜(笑))
もう、嬉しくって、わくわくして、書こうとしたのに………書けません。
どうしても書けなかったのです。
「どうーして!?」
そこから、私の長い旅が始まったような気がします。

二人が結ばれるところを書くに当たって、私はどうしても描きたいことがあり
ました。
『破瓜の痛みと出血』
アリオスがアンジェリークに苦痛を与え、血を流させる、という事です。
私には、とても象徴的に思えました。

エリスの器にするためにアンジェリークの血を求め、己の目的のために敵対し
闘いあった過去。アンジェリークを愛しいと思ったからこそ、自らを消し去っ
たアリオス。転生して再び出会い、もう二度とアンジェリークを傷つけたくな
いという想い。その全てを乗り越えて行われる行為。

こういう同人的創作において、そういう場面はラブラブでさえあればよい。
破瓜の痛みも出血も必要ない、と言われたことがありました。確かにそうかも
しれません。でも、このお話はなにより私の為に書いている話しなのだから…
と考えて、いわば手加減なく書込みました。痛みも出血も、その後のアンジェ
リークの逡巡も、そういったものを一つ一つ手を携えて乗り越えていく二人を
描きたかったのです。


今、自分で読み返してみると、思い出すことも色々あります。
ということで以下(一部に受けがいい(笑))


--製作現場2--

【話しが変ってしまった〜】
割と設定魔の私は、きっちり設定して書いていたのですが、話しが途中で変っ
てしまった…というのもやっぱりあります(^^;
最初の霊震の場面。あれは最初はアリオスはあの日のうちにはアンジェリーク
に会いに行っていませんでした。
ところが、あの辺りを書いていた頃、私の住む場所で結構大きな地震がありま
した。いや、ホントに怖かった。大きな揺れも怖かったけど、天井から落ちて
割れるガラスや電灯を目の前に見て、マジでヤバイと思いました。
(居た場所がパチンコ屋ってのもナンだけど(笑))
携帯で家に連絡しても通じなかったので、余計に不安は増すばかり。急いで戻
る道筋で、壁が崩れている家や、その下のガラス全部が割れている車とか目に
して、悪い想像ばっかしていました。
結果は、むしろ私が居た場所の方が酷い揺れだったらしく、全然被害がなかっ
たのですが、この経験から、アリオスをその日のうちに戻らせる方向に話しを
書き直しました。絶対に居ても立ってもおられないです。
*この地震。電話が通じなかったのを、周囲誰もが経験していました。つまり、
誰もが電話をかけたわけです。ああいう災害の時、直後の電話については、公
優先のシステムの構築ってしなきゃ大変なことになる、とも思いました。

【話しが出来てしまった〜】
海水浴デートの話し。実はあれは書く予定などありませんでした。
しかし、当時、メチャクチャ暑かった。異常に暑かった。クーラー嫌いの私は、
汗だらだら流しながらモニターに向っていました。結果、『海にいきたー
い!』願望が、ついつい海水浴デートを書いていました〜。
(ちなみにあまりの暑さに、逆に車のクーラーを消して、動くサウナ状態にし
て夏を乗りきった私…(^^; でも、これって気持ちいいんですよ〜)

【話しが2つあった…】
アリオスがアンジェリークをさらって襲いかける(笑)場面ですが、実は押し倒
しバージョンもありました(^^;
二つファイルを作って、どっちのパターンがしっくりくるか、両方書きながら
考えました。悩みました。どっちもどっちで。
まさか二択分岐にするわけにもいかないし…(笑) ということで、結局、後へ
の繋がりとかを考えて、あっちの方を採りましたが、『今更アンジェに泣かれ
ようが、あの男がそれで思いとどまるか?』という疑問があったりします。
(押し倒しバージョンの方が思いとどまる理由が明確だった)
あの場面、私的には重要どころなので、その辺りは、未だに心残りです。

【なんで書けなかったの?】
なんに詰まって、止め絵後が書けなかったのか……?
以下は、ご自分の責任に於てクリックして下さいませ。→
GO!



この長い話しを、読んで下さった方々に、心から感謝致します。
ここまで書き終えれたのは、皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。

『私的本編』が描けたので、今後は、そのサイドストーリーとかを書いていけ
たらいいな…と思っています。
もしもよろしければ、お付きあい下さいませ。

2001/11 久路 知紅

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